日本国内における肺がん死亡数は、男性のがんによる死亡の第1位であり、女性の死亡者数も合わせると約7万人もの人が肺がんを原因として亡くなっているのである。従って、今日の我が国が抱える様々な健康問題の内の一つとしてこのことも挙げられ、肺がんによる死亡を減少させていく対策が急務だと言ってもよいだろう。その上で、任意型である低線量CTによる肺ドック(CT検診)を推進していくことは、たばこ対策とともに行っていくべきなのである。
さて、我が国では肺がんに対して、対策型健診という形で40歳以上の男女を対象に胸部単純X線検診と喀痰細胞診検査でもって施策を講じてきた。大規模症例対照研究によると、この対策によって肺がん死亡率は確かに減少させられるだけの効果があると確認された。しかしながら、二十読影を行った場合であってもその効果は限定的であったことが難点であったのだ。また、喫煙者と非喫煙者を対象として行われた海外の大規模ランダム化比較試験では、胸部単純X線検査を用いたスクリーニングでは肺がんによる死亡を軽減させることはできなかった。
今後推進されるべき医療機器として低線量CTがあるのだが、これはマルチスライスCTを用いて被ばく量を通常のCTの1/3にまで抑えられるのが大きなメリットである。日本では、被ばく線量を1mSv以下まで抑える工夫もなされている。
このような背景を受けて、肺がんに関するスクリーニング検査の海外のガイドラインが、重喫煙者に対して毎年の低線量CT検査の受診を推奨するようになっていったのだ。検診にて発見された病変を精査する過程は通常診療であり、主治医による個別での判断が優先的となる。